財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた共同財産を分けることです。
財産分与には、清算的財産分与と扶養的財産分与の2つの意味があります。

結婚生活中に夫婦の協力で蓄えた財産を清算分配することです。
対象となる財産は、原則として「夫婦が協力して得た財産」とされています。たとえば、婚姻期間中に働いて得たお金(現金・預貯金)や、そのお金で購入した物(家具、電化製品等)が考えられます。これらは例え名義が夫婦の一方のものであっても共有財産とみなされます。ただし、婚姻前から各自が所有していた財産や婚姻期間中でも相続や贈与を受けたりした財産は固有の財産となり、財産分与の対象となりません。

離婚した後、経済的に不安定になる側にもう一方が援助をするという意味での財産分与です。
請求する側の生活状況などを考慮して決められ、清算的財産分与や慰謝料とは別に加算されます。
夫婦に共有財産がなくても離婚後の生活が不安定になる場合には請求できる場合があります。

財産分与は財産形成の貢献度に応じて清算するのが原則です。妻が専業主婦であっても、内助の功があってこそ夫が働いて収入を得られるわけですから、共有財産の分与請求が認められます。
以前は専業主婦の評価が低く、財産総額の3割程度が一般的でしたが、最近では5割が多いようです。夫婦ごとに事情もありますから一般的には3割から5割が目安でしょう。
財産分与は夫婦で築いた財産の清算なので、離婚原因にかかわらず請求できます。よって、離婚の原因が専業主婦である妻の不貞行為などによる場合でも妻は財産分与の請求ができます。
財産分与も慰謝料と同様に時効があります。時効は離婚成立後2年となっています

対象となるのは、婚姻後に夫婦が協力して取得し維持した財産です。一方の名義になっていても対象となります。
対象となる主な財産・・・ |
現金・預貯金
株券・国債などの有価証券
不動産
家財道具・車
骨董品・美術品・高額な宝石や着物
保険
退職金(年金)
※退職金は退職前であれば支払いが確定している場合
負債(住宅ローンなど) |
対象とならない財産・・・ |
婚姻前から所有していた財産
婚姻後、相続した財産や贈与された財産
日常的に単独で使用するもの
※洋服やアクセサリー、時計、バッグなど
(ただし、高額な時計や宝石など、その取得や維持に
他方が貢献しているといえる場合には、対象となります)
結婚前の借金
※婚姻後の借金でもギャンブルや浪費により勝手に作った借金は対象となりません
別居後に各々が取得した財産 |
不動産(土地・建物・マンション) |
○不動産会社に査定を依頼する
○近隣の同程度の物件の取引価格を参考にする
○路線価を参考にする
○不動産鑑定士に依頼する
※ローンが残っている場合は評価額から
ローン残高を差し引きます |
家財道具・車 |
○家具・電化製品などは購入時の価格を参考にするが、新品でない限り価値は低い
○車は同程度の車の中古価格を参考にする
※ローンが残っている場合は評価額からローン残高を差し引きます |
退職金 |
○勤続期間のうち、婚姻期間が占める割合を基に算定 |
年金 |
○厚生年金については、年金分割制度がある
年金分割制度についてはコチラから→ |
保険 |
○生命保険・損害保険・積立保険など満期を迎えていないものは離婚時の解約返戻金
の額
※保険会社に照会すれば金額がわかります |
有価証券・骨董品・美術品など |
○時価に換算する |
|
慰謝料
離婚の原因が夫婦の一方の不貞や暴力等の有責事由にあたる場合、他方の配偶者は離婚の請求とともに慰謝料を請求できます。

離婚原因によっては、慰謝料を請求できる場合とできない場合があります。
請求できる・・・○不貞行為
○悪意の遺棄
○暴力 ○生活費を渡さない
○性行為の拒否、不能
○一方的な離婚の申し入れ など
請求できない・・○性格の不一致
○強度の精神病
○双方に同じくらいの原因がある
○相手の親族との不和 ※請求できる場合もあります など

協議離婚の場合、慰謝料をどちらが支払い、金額はいくらにするかは夫婦の話し合いで自由に決められます(話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申立て、離婚調停の中で話し合います。調停が不成立に終わり、離婚が裁判にまで進んだ場合は、慰謝料も判決で決定されます)。
慰謝料には明確な算定方法や算定基準がなく、さまざまな事情を総合的に判断するため個々の事情により違ってくるので、一概にいくらと言えません。
算定要素としては、婚姻期間・支払う側の資力・有責性の程度などがあります。

離婚した後に慰謝料を請求する場合で、相手方と協議が整わない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てるか、地方裁判所に慰謝料請求の裁判を起こすことになります。
※慰謝料には時効があります。時効は離婚成立後3年となっているので、離婚後に慰謝料を請求する場合は注意が必要です。

夫婦関係が破たんした後に浮気をしたり、愛人を作っても、離婚原因を作ったことにはならないので、慰謝料請求の対象にはなりません